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辺文進(1356頃-1428頃)は明代初期の重要な宮廷画家の一人で、花鳥画で知られています。永楽(1403-1424)から宣徳(1426-1435)時代に活動しました。黄筌(903頃-965)の影響をうけた北宋時代の濃厚な色彩と巧緻な画風の伝統を継承し、さらに南宋院画の趣を融合させました。
「三友百禽」には「永楽癸巳(1413)秋七月。隴西辺景昭写三友百禽図于長安官舍。」という款識があります。昔の人々は都を「長安」と称したことから、当時の首都南京で製作された作品であることがわかります。おそらく皇帝の命により描いた作品でしょう。本作は主に松、竹、梅、石により構成され、それらの間に百羽近い鳥が描かれており、極めて装飾性の高い作品だといえます。傾斜した岩石、梅の幹の輪郭線と皴紋の用筆はやや荒っぽく見えますが、基本的には全体が双鉤填彩という技法で描かれており、宮廷の品位にふさわしい繊細で美しく整った作品です。明代の宮廷絵画の多くに吉祥の意味が込められていますが、本作に描かれた松と竹、梅は「歳寒三友」といい、厳しい寒さの中でも萎れることなく耐え忍ぶ志の高さを象徴しています。中国語では、「竹」と「祝」は同音で、長寿を表す松には、長寿を祝う意味もあります。本作には計97羽の鳥が描かれています。100羽いないのに100と題したのは、その数の多さと豊かさ、美しさを表しています。また、100は吉数でもあり、宮廷のために描いた作品であることから、「百鳥朝鳳(訳註1)」も意味していると思われます。
「三友百禽」のもう一つの特色は、自然の生態に近い姿を意図して描いている点です。まず全体に野趣に満ちており、まるで山林の一角に百羽の鳥が群れ集っているかのようです。本物の大自然の中では、このように多種多様の鳥たちが一度に現れることはありえませんが、本作では地面で暮らす鳥も樹上で暮らす鳥もそれぞれがふさわしい場所に配置され、その習性までが描かれており、非常に生き生きとしています。絵の前に立つと、そのにぎやかな鳴き声まで聞こえてきそうで、辺文進がつぶさに生態観察を行ったであろうことがよくわかります。款印を見ると、「多識於草木鳥獣(訳註2)」とあり、画家がこの作品を通して伝えんとしたメッセージを裏付けています。
訳註1 吉祥を表す言葉。多くの鳥たちが鳥類の王である鳳凰に謁見することを意味し、皇帝を暗示している。
訳註2 『論語』陽貨篇の一節。大自然を師とすれば、自己を超越し、万物に思いを馳せることができる。自然の成り立ちや歴史、そこに生きる生物たちの生態を深く学ぶことにより改めて自己を認識し、他の人々との繋がりや世界観、そこから生じる関係を理解し、生きる道を会得することができる。画家はこの一節によって自然に親しむことの大切さを人々に伝えた。
【明 辺文進 三友百禽 軸】
- 01カノコバト(A、1羽)
- 02ヒレンジャク(A、1羽)
- 03コイカル(B、1羽)
- 04クロウタドリ(A、1羽)
- 05メジロ(A、4羽)
- 06ヒイロサンショウクイ(C、2羽)
- 07タイカンチョウ(A、2羽)
- 08オナガ(A、2羽)
- 09ヒレンジャク(A、1羽)
- 10タテジマクモカリドリ、またはエンビタイヨウチョウ(D、1羽)
- 11ヒメイソヒヨ(A、3羽)
- 12シマキンパラ(A、4羽)
- 13ベニバト(A、1羽)
- 14ダルマエナガ(A、2羽)
- 15ハッカチョウ(A、3羽)
- 16ハクセキレイ(A、1羽)
- 17カオグロヒタキ(D、2羽)
- 18スズメ(A、28羽)
- 19カオジロガビチョウ(D、1羽)
- 20コシジロイソヒヨドリ(A、1羽)
- 21アカハラコノハドリ(A、1羽)
- 22シジュウカラ(A、3羽)
- 23シキチョウ(A、2羽)
- 24ソウシチョウ(A、3羽)
- 25ガビチョウ(A、1羽)
- 26コルリ(C、1羽)
- 27メボソムシクイ(A、1羽)
- 28コムクドリ(D、1羽)
- 29ミフウズラ(D、1羽)
- 30シロガシラ(A、1羽)
- 31ウグイス(D、3羽)
- 32ベニヒワ(A、1羽)
- 33タイワンヒバリ(A、1羽)
- 34カオグロガビチョウ(A、1羽)
- 35ヒメコウテンシ(C、1羽)
- 36ジョウビタキ(A、2羽)
A-実際の姿に一致する
B-やや絵画的だが、鳥種が明確に識別できる
C-識別可能だが、疑問点があり確定はできない
D-おおよそ識別できるが、鳥種の確定はできない
-鳥種の識別不能
鳥種識別/台北市野鳥学会 阮錦松 劉華森 李平篤 線描図/台北市野鳥学会 馮双