展示概要
宋 馬和之 古木流泉
馬和之の「古木流泉」は本院所蔵『歴朝名絵』冊の第五開で、川岸に立つ古木と枝にとまる野鴨、空を舞い飛ぶ隼─大きく開けた空間に清らかな眺めが描かれています。構図は簡潔で、景物は左半分に集中しており、右に向かって斜めに伸びる枝が、空を飛ぶ鳥を指し示しています。馬和之は軽やかで自在な筆遣いで樹木の幹と枝を表現しています。このような線は「馬蝗描」と言われます。
画上に籤題がないため、この作品が『詩経』を主題として描かれたものか否かは、研究者によって意見が異なります。これは『詩経』を表現した絵だと主張する研究者もいれば、この「古木流泉」には「詩文」や「詩序」がなく、伝世の『詩経』図に多い「図文一組」または「左図右文」という形式とも異なることから、一般的な山水画とみなす研究者もいます。
この作品は叙情的かつ写意的な筆調で景物が描かれ、文人が好む情趣や美意識が表現されており、卓越した筆致には古風な趣があります。馬和之作とされる伝世作品の中で、多数の研究者が真跡と認めている作品であり、2011年に国宝に指定されました。