展示概要
今も昔も暮らしの質や情趣にこだわりを持つ人々は、何の変哲もない平淡な日常にも何がしかの変化や味わいを生み出そうとします。現在も好まれる挿花、焚香、掛画、そして喫茶の「四事」は、古くからそれらを楽しむ人々がおり、その歴史は千年以上前に遡ることができます。
伝世の文献や器物、書画を見ると、12世紀の宋代の人々は、花を生ける時に花器と花材の組み合わせに思いのほか気を配っていたことがわかります。香りを楽しむ時も、自分だけの香りにこだわるほどでした。また、掛画も住居を美しく装飾するだけでなく、その絵の中に入り込んだかのような趣のある空間を作り出すことが大切にされました。友人との集まりでは、人数が多ければ点茶を中心とした茶席が催され、一人あるいは少人数の場合は、古風な趣のある煎茶を味わいつつ、気品溢れる雰囲気をかもし出しました。
この度の特別展では、花・香・絵画・茶を主題として、各セクションに分けて展示を行います。それぞれの作品を関連付けることにより、12世紀前後に、人々がこの四事にどのような関心を持ち、どのように行動したのかをご紹介します。模擬的に再現された宋代の情景展示を通して、古の人々が楽しんだ挿花・焚香・掛画・喫茶の世界を皆さまもぜひご体験ください。
国家図書館(台湾)並びに大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市)、大徳寺龍光院(京都市)の各機関には貴重な所蔵品のご出品を賜り、本展にご参加いただき、より多元的で豊かな展示が実現できました。ここに心より御礼申し上げます。