展示概要
特別展「ブランドの物語─乾隆帝の文物コレクションと包装の美」では、乾隆帝(在位期間:1735-1795)の文物コレクションとそれに関連する包装や収納法の美しさを主軸として、器物や書画、書籍と文献資料など、各種の精美な収蔵品を展示し、乾隆帝の文物鑑賞法、入手してからの管理や賞玩のスタイルをご覧いただきます。乾隆帝は各文物にふさわしい収納箱を特別に作らせ、適切な方法で収蔵していただけでなく、その作品を元にして時代的な風格と特色を有する新たな作品も制作させました。その多様な手法は現代人が新しい品物を創造し、一つのブランドを確立する─そのような概念にも呼応しています。乾隆帝ブランドの誕生という視点から18世紀に登場した新しい美術様式や皇家旧蔵文物の関連性について改めて考察し、驚嘆せずにはいられない見事な収納法を通して、古代の包装美術とそれに内包される美学と創意をご覧いただきます。
本特別展は4章に分かれています。幕開けとなる「第1章 宝の箱を開けて」で展示される「百什件盒」には各種各様の文物が一つにまとめられており、帝王のコレクションが四方八方からもたらされたことを物語っています。時間的な幅と地域の範囲も私たちの想像を遥かに超える広さに及んでいます。「第2章 古美術を愛した乾隆帝」では、古物を入手した乾隆帝が考証を行い、歴史の軌跡を辿る過程を展示いたします。「第3章 乾隆帝お気に入りのコレクション」では、美術品収納用の「匣」や「盒」を新たに制作させたり、古いものをそのまま使用したりと、効率的に収蔵品の管理を行った乾隆帝の手法とその記録を元に、そこから生じた収納法や陳列の美をご覧ください。「第4章 乾隆帝ブランド」では骨董品と新品の対比を通して帝王のブランドに含まれる新旧二つの要素を明らかにします。いわゆる乾隆製品が古代を範としながらその意図を超越する発想を有する点がおわかりいただけるでしょう。
この度の特別展では、18世紀における文物の包装や収納法、その創意工夫に満ちたデザインの数々を通して、目下流行中のブランド創設という課題に応えると同時に、そこから無限の創造性を生み出せればと考えています。また、帝王独自のブランド確立の過程と手法、この完成されたモデルケースから、文物収蔵における帝王のイメージとその意義について再考します。